アトピー性皮膚炎の患者様などに対して手指消毒についての拘り【スタッフブログ】
コロナ禍における手指衛生は職業・年齢にかかわらず、新たな手湿疹の原因となっています。頻回のアルコールによる手指消毒は皮膚のバリア破壊の原因となります。
皮膚のバリアである角質・皮脂には抗菌ペプチドと呼ばれる抗菌物質が含まれており、この抗菌ペプチドが細菌や真菌・ウイルスの繁殖を抑えています。
エタノールなどのアルコール消毒液は中水準消毒薬に分類され、殺菌力が強く、ウイルス・細菌に非常に有効である一方、皮膚の乾燥を招きやすく刺激性の反応が起こりやすい欠点があります。
手湿疹などの症状のある方がアルコール消毒を行うとバリア破壊がさらに進み、抗菌ペプチドがさらに消失するので、かえって感染を助長する結果になりかねません。
塩化ベンザルコニウムは低水準消毒薬ながら殺菌力があり、MRSAなどの一般細菌、カンジダなどの酵母様真菌にも効果があります。陽イオン界面活性剤なので抗菌効果のみならず、洗浄効果も期待できます。低水準消毒薬であっても皮膚の上にある程度濃い濃度で付着すると、SARS-CoV-2に対して強い消毒作用を示すことが報告されています。またアルコールに比べて皮膚の上では長時間作用する利点も報告されています。
当院ではアルコールによる手指消毒を強要しません。むしろ手湿疹など皮膚のバリア機能に問題がある方には塩化ベンザルコニウムや保湿剤を含む低級手指消毒薬をお勧めしています。